オリジナルIPとD2Cで急成長!ベトナムメディア最大手「DatVietVAC」IPOが示すエンタメ業界の新潮流

公開日 2026年7月12日 最終更新日 2026年7月12日

(c) Anh Trai Say Hi Vie Channel / Facebook

サバイバル番組「Anh Trai ”Say Hi”」などで旋風を巻き起こしているベトナムの総合エンターテインメント・メディア最大手DatVietVACが、ついにIPO(新規株式公開)を実施する。

DatVietVACのIPO概要:予想PER13倍の割安なバリュエーション

DatVietVACは、発行済株式の約11%にあたる1,115万株を新規公開する。公募価格は54,800VNDに設定されており、これは独立機関による評価額(81,716VND)を約33%下回る水準で、上場時の想定時価総額は約6兆1,000億VND(約2億3,000万USD)に達する見込みだ。

投資家にとって最大の魅力は、その割安なバリュエーションにある。具体的には、2026年の予想利益に基づくPER(株価収益率)は13.x倍となっており、韓国のHYBE、JYP、SMなどやタイを含むアジア圏の同業他社の平均PER18.1倍と比較して約28%低い水準に留まっている。また、今回のIPOで調達予定の約6,110億VNDは、主に財務基盤の再構築および負債の返済に充てられ、子会社の純利益率向上を目指す方針だ。さらに、IPOに参加する株主へのディフェンシブな要素として、2026年第4四半期には1株あたり2,500VND(公募価格に対し約5%の利回り)の現金配当が予定されている。

圧倒的な収益力とビジネスモデル:オリジナルIPと「ファンダム経済」

1994年にメディア企業として設立されたDatVietVACは、現在ではコンテンツ制作とメディアサービスの2本柱を軸とするホールディングス体制へと進化している。同業他社であるYeah1 Group(YEG)と比較すると、その収益性の高さが際立つ。2025年のDatVietVACの売上高は3兆1,960億VND(YEGの約1.95倍)、営業利益(EBIT)は4,450億VND(YEGはわずか79億VND)を記録しました。営業利益率は13.9%、ROEは40.8%に達している。

この圧倒的な利益率の違いは、同社が構築した模倣困難な垂直統合モデルという独自のビジネスモデルに起因している。同社は、大ヒット番組などの自社制作によるオリジナル知的財産(IP)を所有し、独自のマネジメント体制を通じてアーティストの商業的権利を独占的に管理・活用している。それに加え、コンサートチケットやグッズ販売などを通じてファンへ直接販売(D2C)する仕組みを確立した。このようなメディア広告収入に依存する従来型のモデルとは異なる、オリジナルIPを軸とした「ファンダム経済」を形成することで、コンテンツ部門単体で40.2%という驚異的な粗利益率を達成している。

今後の成長見通し

DatVietVACは、IPの商業化とD2Cチャネルの拡大により、今後も力強い成長を見込んでいる。証券会社Vietcapの予測によると、ライブイベントやIP関連商品の販売などといったD2Cからの収益は、2025年から2028年にかけて年平均成長率(CAGR)22%で増加するとされている。このビジネス構造の転換により、グループ全体の粗利益率は2028年までに27.2%に拡大する見通しだ。

業績目標としては、売上高を前年比約5%増の3兆3,820億VND、税引後利益を同11%増の4,200億VNDに引き上げることを掲げている。さらに中長期的なビジョンとして、2026年から2030年にかけて年平均15%の成長を継続し、5年後には売上高5兆VND、利益7,800億VNDを目指す方針を打ち出している。

エンターテインメント業界の特性上、年末年始やイベントシーズンに向けて広告費や消費者の支出が増加するため、同社の収益も下半期に集中する傾向がある。

強力なIPとファンダムを武器に成長を続けるDatVietVACのIPOは、ベトナム市場における新たな投資機会として大きな期待を集めている。