公開日 2026年9月24日 最終更新日 2026年9月24日

14時の入場開始を前に、12時45分頃に会場へ到着すると、すでに両サイドの入り口には列ができていた。早くから並んでいるファンたちに話を聞いてみると、なんと「前日の14時や19時から並んでいる」とのこと。雨が降る過酷な状況にも関わらず、ファンの顔に疲労の色は一切見えず、大好きなQuang Hùng MasterDに会えるワクワク感が全身から伝わってきた。

開演時間を迎え、Day2の口火を切ったのはDJ DETERMIND。期待に胸を膨らませて集まった観客たちの熱気をいち早く察知し、重低音が響くアッパーなビートで一気に会場を温め、巨大なフェスの幕開けを華々しく飾った。
DJのビートで温まったステージに登場したのは、今回のイベントで日本代表として唯一の出演となるANIROCKS。美しい夕日が古都フエの空をオレンジ色に染め上げる中、ライブは「STARDUST」で幕を開け、続く「BLAST IT AWAY」で会場のボルテージは急上昇。「UTOPIA X MIDAS TOUCH」、「AKUMANOKO」、「BLUEBIRD」を次々と披露し、国境や言語の壁を軽々と越え、一体感を生み出した。
そしてラストを飾ったのは新曲「Heart on Fire」。そのタイトルの通り、フエの観客たちの心に火をつけるような情熱的なサウンドと力強いメッセージが響き渡り、大熱狂のうちに彼らのステージは幕を閉じた。
出会いと結成の裏側 —— タイミングが結びつけた「架け橋」
——出会い、ANIROCKSを結成したきっかけを教えてください。
AKIさん: 最大の決め手はタイミングでした。チャイナフェスティバルがスタートする際、「中国から一番旬な人を呼ぼう」となり、ちょうど中国のオーディション番組『超級女声』で優勝した直後の彼女に声をかけたのが始まりです。彼女の歌声には「歌心」があり、同じ曲でもニュアンスがとても良い。京劇などを習っていたこともあって発声法が中国らしく、アジアのメロディーに非常にマッチすると感じました。
KENQさん: 出会いは2018年頃のチャイナフェスですね。私はコロナ禍を経て、再びチャイナフェスのステージに戻ってきました。私がANIROCKSのメンバーになったのは、音楽に限界はないと思っているからです。 私たちのバンドには日本語、中国語、英語の曲があり、AKIさんが日本語の歌詞を、私が中国語と英語の歌詞を担当しています。このバンドはまさに「架け橋」のように生まれたもので、すごく面白いですよね。音楽を奏でることは観客やメンバーとのコミュニケーションであり、2つの国をつなぐステージ上で生まれたこの活動は、私にとって本当に大きな意味を持っています。
古都フエでの挑戦と日本代表としての意義
——これまで最前線で日越交流を引っ張ってこられましたが、今回のイベントで日本代表として唯一出演することについて、どのような特別な意味があるとお考えですか?
AKIさん: 世の中には様々なイベントがありますが、今回この『Hue Wonderverse』に日本人として唯一参加させていただけるということで、日本がどんな国か分からない地元の方もたくさんいる中、私たちが初めて会う日本人になるかもしれません。だからこそ、日本をしっかりとアピールしたいと考えました。日本といえばやはりアニメソングが有名なので、それをカバーさせていただいたり、もちろん自分たちのオリジナル曲も含めて紹介していきたいと思います。
——今回古都フエに実際に訪れたことで、ベトナムという国に対する印象に何か新たな発見はありましたか?
AKIさん: 実は10年ほど前にフエを訪れたことがあり、久しぶりに来たのですが発展度には驚かされました。元々王宮があったので古典的な街という認識があり、実際フエで何かやろうとしても比較的動きがゆったりとしていて、以前はここで何かイベントをやろうという気にはなかなかなれませんでした。 しかし、今回Huy Tuấnさんがプロデュースされたこのイベントは、フエ市にとっても大きなチャレンジだったと思います。伝統的な古いものをそのまま残すのではなく、新しくアレンジして今の時代にマッチしたものを作り上げているなとすごく感じました。昨日のステージの規模もすごかったですよね。ベトナムで最高峰のイベントをやったということで、フエ市の方々も「王宮があった街」という自負があると思うので、そこで伝統的なものに最先端のものを古都フエで掛け合わせて表現することは、非常に重要なことだと思いました。
——イベントを裏から動かす運営側としての視点は、ステージでの見せ方や、楽曲のメッセージ性にどのような影響を与えていますか?
AKIさん: 私自身、アーティストでありながらイベントをプロデュースする立場でもあります。もちろん音楽ですから、自分たちの想像したものを表現したいという思いが一番ですが、それ以上に「イベントとして何を求められているか」を重視しています。 プロデュースする側であれば、「出演者にこういう風にやってほしい」「こういうコンテンツがいい」という意図があります。それを私たちが体現できるようにしています。例えば今回は「日本らしさとして何が求められているか」を考えた時、やはりアニメが最先端の文化だと思うので、それを演奏に取り入れるようにしました。
フエの食文化に触れて
——フエのローカルフードはもう召し上がりましたか?
KENQさん: (スマートフォンで料理の写真を見せてくれながら)これ(Bánh Nậm)を食べました! 見た目は甘いのかと思ったら全然違ってびっくりしましたが、すごく美味しいですね。
AKIさん: イカのすり身が乗ったローカルフードを食べたのですが(写真的にエビを使ったBánh Ram Ítに見えました)、それがすごく美味しかったです。今日連れて行ってもらったブンボーフエの有名店も、ローカルな雰囲気の中、スープを全部飲み干してしまうほどの美味しさでした。 また、ホイアン名物の「ホワイトローズ」に似た、葉っぱに包んだエビのすり身風味のワンタンのような料理も美味しかったですね。それから、イベントのスポンサーでもある「HUDA(フーダ)」というビール! 独特の味わいがあり、少し苦味や深みがあって、「バーバーバー」や「ビアハノイ」とはまた違う美味しさでした。
——KENQさんはフエ名物の「塩コーヒー」は飲みましたか? コーヒーに塩とクリームが入っていて、キャラメルのような味わいですよ。
KENQさん: まだです! 甘いコーヒーは好きなんですが……キャラメルみたいなんですか!? どこにあるの? 飲みたい! 絶対飲みたいです。
音楽を通して描く、文化交流の未来
——最後に、音楽を通じて次世代に一番残したい文化理解や文化交流のビジョンを教えてください。
KENQさん: 「次世代に何かを伝えていくか」ですか? オーマイガー、私ってそんなにおじさんに見えますか?(笑) 私は、自分たちと次世代の間に大きなギャップがあるとは思っていません。私たちはみんな同じ「ネット世代」を生きていて、次の世代が「AI世代」になったとしても、それは単なる技術的な違いです。世代や年齢が違っても、この世界に生きる人々が求めているものは共通しています。みんな愛を求め、誰かと何かを分かち合い、自分自身を幸せにしたいと願っている。だから、これは「次世代のために何かを残す」というより、「自分たちの人生を自分たちで創り上げていく」ということなのだと思います。
AKIさん: 私は最初に中国で音楽活動をスタートさせましたが、音楽は言語に関係なくメロディで通じ合える最高の武器だと実感しています。音楽を奏でることで、人との距離は一気に近くなります。 また、音楽を演奏することは「自分からの発信」です。日本人は比較的真面目で引っ込み思案なところもありますが、まずは自分からアプローチし、声を発することが非常に重要です。特に若い世代にはそういった姿勢を持ってほしいですね。新しい世代がどんどんチャレンジできる土壌を作らなければなりませんし、その土壌となる「場」を作っていくことこそが、我々の使命だと思っています。
ANIROCKSの後、ステージは再び熱狂のDJリレーへ。ここで特筆すべきは、彼らのパフォーマンスを彩った規格外のステージセットだ。総横幅100メートルに及ぶステージはフエ史上最大であり、ホーチミンやハノイといった大都市のフェスでも稀に見る巨大なスケールを誇る。世界基準の大型LEDスクリーンに加え、50台ものレーザー機材が導入されており、海外から招かれたゲストDJたちでさえ驚くほどの充実した演出設備が整えられていた。
この世界基準のステージで再び観客に火をつけたのはDJ MESS。彼女は2026年7月にベルギーで開催された世界最大級のEDMフェス「Tomorrowland 2026」への出演も果たした実力派であり、その多彩な選曲で広大な会場を激しく揺らした。続くTriple D x Tùng Monkeyが視覚と聴覚を同時に刺激する圧巻のプレイを展開し、熱気はさらに加速していく。

そしてステージには、光る「ノンラー」を被ったDJ VINJAZが登場。彼はインドネシアの「Ultra Bali」、クロアチアの「Ultra Europe」、タイの「Neon Countdown」といった世界的なフェスに出演するだけでなく、Revealed Recordings、Electric Fox Music、Reaching Altitudeなど数々の名門レーベルから楽曲をリリースしている世界的プロデューサーだ。1日目に比べて圧倒的に子どもたちの姿が多かった2日目だが、VINJAZはそんな子どもたちの心もがっちりと掴むキャッチーかつ絶妙な選曲で、フロアを笑顔と熱狂で包み込んだ。

その後も韓国人DJ Vandal Rock、そしてイタリア人DJデュオVINAIへとバトンが渡され、国際色豊かなトップDJたちがノンストップで繰り出す重厚なEDMサウンドと50台のレーザー光線が交錯。フエの夜空は、誰も見たことのない巨大な熱狂のダンスフロアへと変貌を遂げた。
DJタイム終了後、Trần Hữu Thuỳ Giangフエ市人民委員会副主席兼フエ・フェスティバル組織委員長から、観客とDJ陣へ向けて重大な問いかけが投げられた。「今年は2泊3日の開催でしたが、来年『丸1週間』開催するとしたら、皆さんまたフエに戻ってきてくれますか?」という質問に、会場からは割れんばかりの「はい!」という大歓声が沸き起こった。
さらにメインDJを務めたVINAI、韓国から来たVandal Rock、そしてVINJAZの3組に「来年も出演してほしい」と公開オファーすると、DJ陣は「We love Vietnam!」「Yes!」と快諾。来年は丸1週間にわたる超大型開催となること、そして豪華DJ陣の再結集が早くも約束される展開となった。

イベント終盤、ステージでは観客参加型のダンスチャレンジがスタート。「エネルギーと体力、ダンスに自信がある人は?」という呼びかけに選ばれたファンたちがステージに上がり、プレゼントを懸けて会場を沸かせた。
MCがステージ上のファンに「今日、誰が一番好きですか?」と問いかけると、「Quang Hùng MasterDです!」と元気な答えが。すかさずMCが「じゃあ、彼の曲を自信満々に歌わないとね!」と返し、会場の期待感は最高潮に達した。

そしてついに、「皆様、盛大な拍手でお迎えください…Quang Hùng MasterD!」というMCの高らかな紹介とともに、待望のアーティストがステージに降臨。フエの夜は、さらなる熱狂のステージへと突入していった。
Quang Hùng MasterDが実際にステージに登場したのは23時30分頃。つまり、一部の熱狂的なファンは実に24時間以上も彼を待ち続けていたことになる。出演時間が事前未発表のシークレット状態だったにも関わらず、会場には約5万人もの観客が集結。小さな子供からお年寄りまでが深夜まで帰らずに会場を埋め尽くす光景は、地元フエでの彼への圧倒的な愛と求心力を物語っていた。
壮大なINTROとともに彼がステージに降臨すると、会場の熱狂は一気に爆発。オープニングナンバー「Catch Me If You Can」で華々しく幕を開けた。
続く最初のMCでは、故郷のファンに向けて会いたかった気持ちを熱く問いかけた。この日の会場には小中学生と見られる若いファンの姿も多く見受けられたため、時刻が夜遅くに差し掛かっていたこともあり「ご両親にはちゃんと許可をもらってきた?」「今夜、ちゃんと家まで送ってくれる人はいるの?」と、子どもたちの安全な帰宅を本気で心配する一幕も。ユーモアを交えながらも、地元の若いファンたちを気遣う温かい人柄を覗かせた。
その後、「Trói em lại」と「Đừng Khóc Một Mình」のサビを会場全体で大合唱。ここで、音楽に合わせて歌わずに手を振っているだけのファンを見つけると、すかさず「後で縛りに行ってしまうよ」と愛あるいじりを展開。『Trói em lại(君を縛る)』という楽曲名にかけた見事なコミュニケーションで会場を大いに沸かせ、そのまま「Đừng Khóc Một Mình」のパフォーマンスへと突入した。
続くMCでは、「Secret」をファンと共にアカペラで合唱。当日は朝から小雨が降るなど天候が不安定だったため、Quang Hùng MasterDは雨に濡れたファンの体調を気遣い、なんと自らヘアドライヤーを持参。最も熱い声援を送ったファンの元へ直接降りていき、プレゼントするという神対応を見せ、会場からは割れんばかりの歓声が上がった。
そして「50 cuộc gọi nhỡ」を披露した後のMCでは、今度は「Chân thành」のアカペラ合唱で会場を温かな一体感で包み込む。その勢いのまま、先ほどサビを合唱して焦らしていた「Trói em lại」のフルパフォーマンスへ雪崩れ込み、ファンの熱をさらに引き上げた。
そして最後に「Thủy triều」の大合唱を巻き起こすと、そのまま「Thủy triều」へと突入。圧倒的なパフォーマンス力と、ファンとの距離を感じさせない温かな人間性が光った今回の凱旋公演は、V-POPシーンにおける彼の揺るぎない人気を改めて証明し、最高潮の盛り上がりのままフィナーレを迎えた。

Quang Hùng MasterDが圧倒的な熱量でステージを駆け抜けた後は、彼のバックDJを担当していたHinoがそのままステージを引き継ぎ、会場を巨大なダンスフロアへと変貌させた。かつて「Double Noize」のメンバーとして活動していた彼の経験とフロアメイクの手腕は現在のステージにも確実に生きており、多彩なトラックで観客を瞬時にロックしていく。
ここで驚くべき光景が広がる。時刻はすでに深夜12時半を回っていたにも関わらず、会場に残っていた若いファンたちがPSYの「カンナムスタイル」などの爆音EDMに合わせて元気いっぱいに飛び跳ね、大盛り上がりを見せていたのだ。日本では、深夜にこれほど若い世代がDJの流す曲に合わせて踊る光景など到底見られないため、カルチャーショックすら覚えるほどの衝撃的なシーンだった。夜更けの音楽フェスで若い世代が底知れぬ体力を発揮して熱狂の渦に巻き込まれている姿は、フエの観客が持つ圧倒的なエネルギーを象徴していた。
2日目のレポートは、主にFanzone2エリア内にあるプレスエリアからの視点を中心にお届けした。
ステージからは少し距離があったものの、前からも後ろからも、そして左右からも直接感じられるオーディエンスの熱気は凄まじいものだった。
ベトナムでの入場無料のフェスティバルには初めて足を運んだが、観客の熱狂ぶりはもちろんのこと、ステージの演出や全体的なクオリティに至るまで、有料の大規模コンサートと完全に同レベルの凄まじさだった。違いと言えば、「レインコートとペンライトが配られるか配られないか」くらいではないか、と本気で感じたほど。
2日目は、幸いにもショーの間は雨が降ることはなく、代わりに会場を包み込んでいたのは、深夜まで冷めることのない凄まじい「熱気」。
事前に「フエはQuang Hùng MasterDの地元だな」と軽く思い描いてはいたものの、実際の会場の熱狂ぶりにはただただ圧倒された。特に彼のパフォーマンス中は会場の熱気が尋常ではなく、スマホのカメラレンズがボケてしまい、3倍以上のズーム機能が全く使えなくなるというハプニングに見舞われるほど。
ファンのすさまじいエネルギーを全方位から肌で感じた、忘れられない取材となった。