なぜSB19は「VISA」をテーマに選んだのか?フィリピンの才能を阻む「見えない檻」へのメッセージ

公開日 2026年2月26日 最終更新日 2026年2月26日

(c) SB19/Facebook

フィリピンが誇る「P-POPの王者」SB19が、2026年の幕開けを飾る待望のニューシングル「VISA」を2月20日にリリースした。

今作は単なるダンスポップの枠を超え、フィリピンの才能を縛り付ける「見えない檻」や社会システムへの鋭い問いかけを内包した、彼らにとって極めて重要なマニフェストとなっている。

才能を縛り付ける「見えない檻」への挑戦

「VISA」の根底にあるのは、フィリピンの才能を制限している社会的な「見えない檻」への強い危機感だ。メンバーのStellは、今回のリリースがグループのサウンドや個性を定義するだけでなく、自分たちの立ち位置を明確にするものであると述べており、彼らは、国民の忍耐強さや回復力が称賛される一方で、実際には非効率なシステムが人々の負担となっている矛盾を指摘。

この楽曲は、リーダーのPabloがワールドツアー中に直面した、複雑で困難なビザ申請プロセスでの実体験から着想を得ている。彼は、この曲が政府当局に届き、アーティストやアスリート、海外労働者(OFW)が国外で活動しやすくなるような法整備や支援策が進むことを切望していると発信。音楽を単なる娯楽に留めず、国家レベルでポジティブな影響を与え、フィリピン文化を前進させるための手段として活用する姿勢が鮮明に打ち出されている。

パスポートの壁と「グローバルな承認」への問い

本作の背景には、フィリピンのパスポートが世界的に見て自由度が低いという、避けては通れない現実がある。ヘンリー・パスポート・インデックスで世界68位(2026年時点)と低迷しており、ビザなしで渡航できるのは65カ所に留まり、国を背負って戦うアスリートたちがビザの問題で海外遠征を断念せざるを得ない現状や、海外で成功して初めて国内で称賛されるという「グローバルな評価への依存」に疑問を呈し、自国の才能が正当に評価される社会への願いを込めている。

音楽的なアプローチにおいても、「VISA」は従来のP-POPの枠組みを打ち破った。従来のポップスでは珍しい楽器やメロディラインを多用した、非常に独創的で型破りなものであり、緻密に配置されたパーカッションやアドリブの要素が、聴く者に強烈なインパクトを与えるダンスポップとしての完成度を支えている。

同時に公開されたミュージックビデオでは、メンバーが冷淡で退屈なビザ審査に翻弄される様子がシニカルに描かれており、社会風刺とエンターテインメントが見事に融合。人気クリエイターのNinong Ryがカメオ出演している点も、現地で大きな話題となった。「すべては政治的であり、無関心でいることは不可能だ」という思いが、クリエイティブの隅々にまで浸透している。

SB19が切り拓く「新時代」の幕開け

「Simula at Wakas: Kickoff Concert Album」を経てリリースされた「VISA」は、SB19にとって新たなチャプターの始まりを象徴するファンファーレだ。彼らは今後、2026年4月18日にSMDCフェスティバル・グラウンドで開催される「Wakas At Simula: The Trilogy Concert Finale」をもって、長きにわたったワールドツアーを締めくくる予定だ。

音楽を通じて社会の不条理を突きつけ、変革を促そうとするSB19の挑戦。彼らが放つメッセージは、フィリピン国内のみならず、同様の構造的な障壁に直面する世界中の人々の心に、強い勇気と共鳴を与えるだろう。