公開日 2026年6月9日 最終更新日 2026年6月9日

カムバックの予告からリリース後の現在に至るまで、約1ヶ月間にわたり話題を席巻し続けているV-POP界のトップアーティスト、Sơn Tùng M-TP。
世界的ラッパー・Tygaとのコラボレーションで華麗なカムバックを果たした「Come My Way」は、素晴らしい記録を打ち立てる一方で、MV内のセットデザインに関するアートワークの類似性が指摘された。
この件に関して、制作会社や所属事務所からの声明発表が続いていたが、6月9日にはついに問題となったシーンの修正が公式に発表され、事態は新たな局面を迎えている。
Sơn Tùng M-TP待望のカムバック作となった「Come My Way」は、リリースから24時間で約1,300万回の再生を突破し、V-POP界のアイコンとしての揺るぎない人気を改めて証明した。
過去のメガヒット曲「Hãy trao cho anh」や「Có chắc yêu là đây」の爆発的な初動と比較すると、今回は少し穏やかな推移を見せている。この背景には、現在の世界的トレンドである「アフロビート」を大胆に採用した、新たな音楽性への挑戦が影響していると考えられる。
音楽的に斬新で洗練されたアプローチである反面、明確で爆発力のあるサビを持たないため、メロディアスで感情豊かな楽曲を好むベトナムの一般リスナーにとっては、ややキャッチーさに欠けると受け止められた可能性がある。
これをもって「人気に落ち着きが見えた」と捉えるか、「世界基準の新しい音楽性への過渡期」と評価するかは、ファンの間でも大きく意見が分かれた。
楽曲への評価とは別に、本作のMV制作の背景について議論の的となっているのが、MVの3分55秒付近に登場するセットデザインだ。このセットが、ベトナムのビジュアルアーティストであるLê Giang氏が2017年に発表したインスタレーション作品『Tàn Chỉ』と非常に似ているとの指摘があった。
当初、MVの美術設計を担当したMicrowave Soupsは、初期のアイデア出しの段階で同氏の作品を参考にしていたことを認め、事前の相談なく使用してしまったことについて謝罪した。
しかし、この作品はGoethe-Institutの支援を受け、Lê Giang氏が紅河デルタ地域で何年もかけて行った真摯なフィールドワークの結晶。Lê Giang氏側は6月5日、制作側からの謝罪について「概念のすり替えであり、無断使用という本質的な問題への責任が果たされていない」として受け入れない姿勢を表明。若手アーティストたちの健全な創作環境を守るためにも、声を上げ続けるとしている。
事態が混迷する中、6月5日夜にプロジェクトの中核を担う企業から重要な公式声明が発表された。これまで懸念されていた「アーティスト本人の関与」について、明確な線引きが行われてた。
総合制作会社であるAntiantiartは、MV制作の全工程を請け負う立場として、アイデアの確認や美術設計などすべてのクリエイティブにおいて同社が独立して決定を下したと明言し、全責任を負う姿勢を示した。発注元であるM-TP Talent(Sơn Tùng M-TPの会社)については、契約時に知的財産権の厳格な遵守を義務付けていたことを公表し、自社の確認不足によりSơn Tùng M-TPおよび同社に多大な迷惑をかけたとして公式に謝罪。今後の対応としては、Lê Giang氏との直接対話に向けて積極的に動いており、法的・技術的な問題の解決に向けてMicrowave Soupsとも連携していく構えだ。
一方、所属事務所であるM-TP Entertainmentも、Antiantiartの声明をシェアする形で沈黙を破り公式見解を発表。同社は常に知的財産権や著作権を尊重しており、協力会社にも厳格に求めていると強調した上で、今回の事態は「予期せぬ不測の事態」であったと遺憾の意を示した。SNS上で制作会社やLê Giang氏への心ないバッシングが過熱する中、冷静な対応を呼びかけ、現在は当事者間の話し合いを注意深く見守っており、ファンや公衆に対しては、関係者が前向きな解決策を見つけるまで冷静に見守ってほしいと呼びかけた。
議論が続く中、6月9日にM-TP Entertainmentは新たな声明を発表し、MVの修正を明らかにした。具体的には、議論の中心となっていたMV終盤のシーンを削除した。
事務所側は、完成した芸術作品を変更することは決して容易な決断ではなかったとしつつも、これ以上の不要な議論の過熱を防ぎ、関係者が冷静に対話できる環境を作るための「善意の対応」であると説明。また、ネット上での議論が過激化し、関係する個人や団体がこれ以上の圧力や心理的な傷を負うことを望まないという配慮も示した。
一方で、このMVの修正措置は「法的な結論や著作権侵害を直ちに認めるものではない」と明確に釘を刺している。権利に関する問題については、客観的な事実に基づき、現行の法律に従って引き続き解決を図るスタンスを保っており、ファンや公衆に対しては冷静に事態を見守ってほしいと改めて呼びかた。