ABS-CBN、ロペス家内部の対立を乗り越え事業継続へ:2025年はコンテンツ事業好調で損失縮小

公開日 2026年5月4日 最終更新日 2026年5月4日

(c) ABS-CBN CORPORATE

フィリピンのメディア大手ABS-CBNは、創業家であるロペス家内部の対立や会社解散の提案が浮上する厳しい状況の中、事業の継続と従業員保護の姿勢を明確にした。

一方で2025年の業績は、映画やデジタル配信などのコンテンツ事業が牽引し、徹底したコスト削減の効果も相まって損失の大幅な縮小に成功している。

ロペス家内部の対立と会社解散提案の波紋

ABS-CBNの役員会において、会社の解散案が提出されていたことが確認された。Eugenio “Gabby” Lopez IIIが主導するロペス家の多数派によると、この解散案は昨年Federico “Piki” Lopezによって提案されたものだ。しかし、数千人の雇用を危険にさらし、従業員や債権者への義務を果たせないとして、多数の役員の反対により否決された。多数派はFederico “Piki” Lopezをグループ会社の社長兼CEOから解任しており、一族内の対立が表面化している。

退職金を巡る疑惑

一部の退職者が優遇されているとの主張に対し、ABS-CBNは「大衆を誤導する嘘」としてこれを強く否定。年金基金の減少は、2020年に政府の命令で放送権を喪失したことに伴い、解雇された約6,000人の労働者への退職金支払いによるものが大きいと説明している。

同社は当時のRodrigo Duterte大統領政権下で巨額の赤字と大規模な人員削減という歴史的な痛手を被ったが、現在は着実な財務改善を見せていると強調している。

広告・消費者収益の増加と徹底したコスト削減

選挙関連の支出や、「Batang Quiapo」などのプライムタイムのヒット番組に支えられ、広告収益は4億2,100万ペソ増加した。また、映画、音楽、ライブイベントの好調により、消費者向け収益も4%増の54億6,000万ペソとなった。特に、国民的ガールズグループ「BINI」のワールドツアーは、ドバイ、ロンドン、北米など14都市で開催され大きな成功を収めている。

同時に、一般管理費や人件費などの営業費用を9%(14億3,000万ペソ)削減するなど、より多くのイベントを開催しながらもコストを抑えることに成功した。

映画部門とデジタル部門の目覚ましい躍進

傘下の映画スタジオ「Star Cinema」は、『Call Me Mother』(世界興収3億8,900万ペソ)を筆頭に、フィリピン映画の年間興行収入トップ3を独占。さらに、同スタジオ初のNetflixオリジナル作品『Sosyal Climbers』は、非英語映画のグローバルランキングでトップ10に2週間ランクインする快挙を成し遂げている。

また、全部門の中で最も好調だったのがデジタル部門だ。D2C収益は過去最高の10億3,000万ペソに達し、直接広告販売も前年比23%増を記録。120億回の再生数を誇るYouTubeチャンネルのほか、動画配信サービス「iWant」の再ローンチ成功により、国内の登録者数が19%増加した。

ニュースとグローバル展開の堅調な推移

ニュース部門では、選挙特番「Halalan 2025」が高い視聴率を獲得。海外向けのグローバル部門でも、年間29の国際イベントを開催し、イギリスやカナダで行われた「ASAP Natin ‘To」の30周年記念ショーには記録的な観客を動員した。海外のフィリピン人労働者向けの放送網であるTFCの視聴者数も約7%増加している。

グループ全体の財務状況と今後の展望

ABS-CBNグループ全体で見ると、ケーブルテレビおよびブロードバンド事業の収益が39%減少した影響で、連結収益自体は9%減の158億5,000万ペソとなった。

しかし、全社的なコスト削減(営業費用を18%削減)が功を奏し、グループの経常連結純損失は前年比で13%改善した。資産売却に伴う一時的な損失などをすべて含めた最終的な報告純損失額も、前年の60億9,000万ペソから47億2,000万ペソへと23%縮小しており、厳しい環境下でも確実に収益体質の改善が進んでいることが伺える。