公開日 2026年1月3日 最終更新日 2026年1月3日

次世代スター、派偉俊(Patrick Brasca)と陳華(Hua Chen)。この二人の化学反応によって生まれた「你沒等我去的舊金山 Unsent」は、公開直後から「泣ける」「共感しかない」と大きな反響を呼んでいる。
この楽曲の完成度の高さを支えているのは、プロデューサーを務めた派偉俊の並々ならぬ執着心だ。彼は理想のサウンドを追求するために、何度もリテイクを重ね、微細な調整を幾度となく繰り返した。
作詞を担当した陳華が「制作期間中は、深夜にパトリックからメッセージが届くたびにビクビクしていた」と冗談交じりに振り返るエピソードは、彼の音楽に対するストイックな姿勢を物語っている。
しかし、その徹底したこだわりがあったからこそ、派偉俊の流麗なR&Bの転音と陳華の温かみのある民謡的な歌声は、互いを消し合うことなく、まるで夜間飛行を続ける二機の飛行機のように絶妙な距離感で響き合っている。
歌詞の根底に流れているのは、別れの後の「出口のない孤独」だ。
主人公は元恋人の家の前に立ち、今も手の中にある鍵を見つめながら、かつて共有した些細な記憶や「もしも」の未来を延々とリプレイし続ける。二人の間にあったはずの約束、一緒に行くはずだったサンフランシスコ、そして書きかけのまま送ることができなかったメッセージ。
これらはすべて「未送信」のまま、行き場を失って心の底に沈殿している。新しい出会いがあっても、誰かの面影に元恋人を重ねてしまい、特に夜が来るとその悲しみは何度も波のように押し寄せる。関係が正しくなかったと頭では分かっていても、失ったことによる空虚さは埋められない。そんな現代人の抱えるリアルな痛みが、陳華の言葉選びによって生々しく描き出されている。
本作には、音楽的な仕掛けとしても「果たせなかった約束」が織り込まれている。
編曲においては、サビの鼓動が最高潮に達する瞬間に突然バスドラムが消えたり、ベースが予定よりも早くフェードアウトしたりと、まるで離陸直前に許可を取り消された飛行機のような「中断」のニュアンスが3度にわたって組み込まれている。
この音楽的な不安定さは、MVで多用される分割画面の演出とも共鳴。画面越しに重なり合っているように見えても、物理的・心理的にはすでに分断されている二人の日常。サンフランシスコの象徴である霧や路面電車が台北の街並みに逆流してくる幻想的な映像は、時間は巻き戻せても遺憾だけは消し去ることができないという残酷な事実を突きつけている。
派偉俊のメロウな歌声と、陳華の切ない歌唱は、「行けなかった場所」を心の中に持ち続けることを許してくれる。
この曲を聴き終えた時、私たちは自分の中の「未送信の想い」と向き合い、それをそっと財布の奥にしまうことができるのだ。
サンフランシスコという景色を「汚れない思い出」として凍結させたまま、また明日を生きるために。